ユビウミウシはしばしば観察されるごく小さい個体は、たいてい背側突起が3対しかないことから、生長とともに背側突起の数を増やしていくのだろうと考えていました。 そしてどのサイズでいくつの突起をもつのか、ということは一概に言えないだろう、とも思っていました。ナンヨウウミウシやユビノウハナガサウミウシでは生長とともに背側突起が増えてゆくようすが撮影されています。こうして背側突起の数だけでみてしまい、ヤマトユビウミウシをユビウミウシのシノニムとしていました。
しかし背側突起のみならず触角鞘の突起の形状までは見ていませんでした。本種は鞘の後方の部分が少し広がった膜状に突起し、それに分枝が見られるということです。なんと相模湾産後鰓類図譜にちゃんと書かれていたことでした(この程度の変異はあるだろう、と考えたのかもしれません)・・・そしてこの種類は種名
B.hermanni Angas, 1864 とされています(Gosliner
et al., 2008)。本邦では
B.japonica Baba,1949 で知られていました。これはジュニア・シノニムになります。
サブカットのものは全体に縮んだ印象で、触角鞘も縮んでいますが、その形状を推察するにヤマトユビウミウシの可能性が高い個体、と考えます。